【出版社・メディア向け】 デジタルサブスクリプションビジネスを始めるための入門ガイド

メディア業界全体で紙媒体の発行部数が減少し、デジタル広告が一般的になった現在、ユーザーとの直接的な関係を確立し、D2C収益モデルを構築する重要性が高まっています。サブスクリプションビジネスは、今後伸びしろが多い分野であり、ビジネスの売り上げの見通しが付きやすく、収益性の高いビジネスモデルです。

広告収入に依存したビジネスから、ユーザーから直接収益を得るビジネスモデルへとシフトしていくには、新しいスキルや見慣れない指標の理解や、「顧客」と「ビジネス」のそれぞれの視点に立った戦略を構築をする必要があるため、かなり大規模なプロジェクトとなることが想定されます。

Pianoのサービスは、数千ものウェブサイトやアプリで活用され、世界中の大手メディアのサブスクリプションビジネスのローンチを成功に導いてきた実績があります。弊社の戦略、リサーチ、マーケティングのエキスパートは、それぞれの企業に最適なサブスクリプションモデルの構築や、カスタマージャーニーの最適化、エンゲージメントと収益の向上方法を熟知しております。これらの知見を踏まえ、企業のビジネスゴール実現をすべく、サブスクリプションビジネスをスタートさせるプロセスを以下でご紹介いたします。

フェーズ1:オーディエンス理解を深める

フェーズ2:新機能・サービスの開発

フェーズ3:ビジネスシナリオのモデリング

フェーズ4:Go-To-Market戦略の構築

 

フェーズ1:オーディエンス理解を深める

成功するサブスクリプションモデルは、今まで実現していなかったユーザーのニーズを満たし、ユーザーの行動に合致するものである必要があります。自社に最適なモデルを構築するための基礎は、顧客の「ニーズ」と「行動」の両方を理解することです。

フェーズ1では、顧客、ビジネス、コンテンツ、そして市場での位置づけをより深く理解する為に、定量分析と定性調査に重点を置くことを推奨します。

  • ターゲットオーディエンスの条件と母数を決める。
  • ユーザーのペルソナを構築し、その対象となるユーザーのセグメントやニーズ・課題をマッピングする。
  • 潜在的なビジネスゴールと課題を社内の主要なステークホルダーと共有し、連携する為の体制を整える。
  • 競合の製品比較や価格設定などのマーケット分析を行う。

 

ステップ1:ユーザーとその行動を分析する

コンテンツを最も多く閲覧しているのは、どのようなオーディエンス(セグメント)であるかを考えます。ほとんどのサイトでは、比較的少数のユーザー(2〜12%)が、ページビュー全体の約半分を占めています。このようなエンゲージメントの高いユーザーにこそ、注目をするべきです。

彼らはどのようなコンテンツに一番興味を示すのか?使用しているデバイスは何か?どこからの流入なのか?ニュースレターを購読しているのか?メールアドレスを取得済みか?

上記のような質問の答えを見出すことで、ターゲティングユーザーのセグメント分けや、そのユーザーのコンテンツ消費行動を知ることができます。また、ビジネス機会の全体を把握するために不可欠なユーザー規模を把握できます。

ステップ2:ロイヤルユーザーのプロフィールを強化する

初めに、サイトの一般的なユーザー属性に当てはまる小グループを募ります。グループの規模は、ステップ1で特定したエンゲージメントの高いセグメントの人数と同数にします。これらのユーザーに、一人ずつ、もしくは合同でインタビューを行い、彼らのサイト上の嗜好性や行動、1stパーティデータ、ゼロパーティデータだけでは知り得ない情報を引き出します。

目標は、自社サイトと競合サイトの習慣・傾向を理解し、コンテンツカテゴリーにおける一般的なルーティン、目標、ニーズ、課題を明確にするユーザーペルソナを作成することです。彼らはどんなコンテンツを重視しているのでしょうか。コンテンツ消費は、彼らのルーティンにどのように組み込まれているでしょうか。貴社サイト上のエクスペリエンスを改善する余地はあるでしょうか。

このような定性的な観点から得るインサイトと定量データを組み合わせることで、オーディエンスの目的、つまり彼らが貴社サイトと関わることで、生活の中で何を達成しようとしているかをより深く理解することができるようになります。

ステップ3:社内コミュニケーション

社内チームのすべての主要なステークホルダー (編集、マーケティング、広告営業、製品管理、データ、インサイト等の責任者) とコミュニケーションを図り、サブスクリプションサービスを構築する際の潜在的なビジネス機会と課題をまとめます。

ビジネスのあらゆる部門を代表する社内関係者とやり取りをすることで、ユーザーを重視したサブスクリプションビジネスの立ち上げに向け、多数の部署が連携し、プロセスへの実行準備が整います。

Pianoの調査において、サイト上で有料サービスをローンチする際に直面する最大の課題の1つに、「社内連携」が挙げられています。内部での必要なサポートを得るためには、このステップをできる限り徹底して行うことが重要です。

ステップ4:競合他社の調査

自社のユーザーについて理解を深めることができたら、次のステップは競合他社へと移ります。正式なサブスクリプションサービスの構築を始める前に競合他社を理解することは、今後のビジネス成功のためには必須であると言えるでしょう。

短期的かつ長期的な情報を精査・分析し、競合他社が市場でどのように位置付けされているかを調べてください。市場シェアや収益の伸び、その業界内で迫り来る規制やリスクなどを考慮し、全体像とその中での競合他社、自社の位置づけをより現実的な観点から把握することが重要です。

次に、それぞれのサイトがユーザーに何を提供しているのかを考えてみてください。全く同じユーザーにサービスを提供しているのでしょうか?もしそうである場合は、どのようにユーザーを自社のサイトに誘導し、競合他社のサイトとの差別化を図ることができるでしょうか?その競合他社は、自社のオファーや価格設定の参考となるサブスクリプションビジネスをすでに提供しているでしょうか?

フェーズ2:新機能・サービスの開発

フェーズ2では、サブスクリプション・サービスのベストアイデアを構築し、確実に市場で際立つサービスを提供することに重点を置きます。まず、フェーズ1でやりとりをしたステークホルダーグループを集めて、サブスクリプションサービスに関する集中セッションを行います。合宿のように、オフィスから離れた場所で2日間程度で行うのが理想的です。セッションでは以下のことを行います。

  • サービスのターゲットペルソナとその役割を定義する
  • ブレインストーミングを行い、サービスの可能性と優先順位づけをする。
  • ユーザーのフィードバックに基づき、サービス・コンセプトの設計を改善する

このセッションに参加するステークホルダーは、コンテンツ、ビジネス、ユーザーを最もよく知る者として、ビジネスの目標、課題、ユーザーの行動など、新しい提案をする際に必要な知見をアドバイスできるはずです。

ステップ1:インサイトの共有

フェーズ1で構築したユーザーペルソナをステークホルダーと一緒に見直し、ゴールと満たされていないニーズを共有します。ユーザーにインタビューをした際の録音や動画があれば、ステークホルダーがユーザーの洞察を直接聞くことができるので、記録は残すようにすると良いでしょう。

また、競合他社の状況を再調査し、最初に収集した知見の検証や修正も必要です。つまり、集中セッション(合宿)に参加する全員が、収集したインサイトについて十分に説明を受け、新しくそして最良のサブスクリプション・サービスを構築するために、同じラインに立つ必要があるのです。

ステップ2:ビジネスゴールの設定

競合他社の再調査やペルソナの見直しを行い、解決すべき潜在的な問題を提起する際に、その問題から、中核となるビジネスゴールを導き出すことができます。例えば、広告が原因でコンテンツページの読み込みに時間がかかりすぎるというのがユーザー共通のフィードバックである場合、広告なしの有料コンテンツのサービスを提供することがビジネスゴールとして挙げられます。

課題やユーザーニーズのリストアップが完了したら、次に、そのリストに優先順位をつけます。場合によっては、1つの課題に対する解決策を作成してから、他の問題に移ることも必要でしょう。優先して解決すべき課題を最終的に3〜5つに絞ることで、サブスクリプション・ビジネスのローンチに向けたメインゴールを見出すことができます。

ステップ3:ブレインストーミングで解決策を探求

次に、ブレインストーミングで各ペルソナの課題に対する解決策を検討します。参加する全てのステークホルダーは、サービス全体のコンセプトやサービスの特徴など、実現可能かどうかはこの段階では気にせずに、大小様々なアイデアをできるだけ多く提供します。

個人レベルで熟考した後、全体でそれぞれのアイデアを共有します。そこで選別されたベストな解決法は、サブスクリプション・サービスのコンセプトを定義する際に活用できます。

ブレインストーミング中にアイデアとして出された機能や解決策はすべて記録しておきましょう。すぐに実行に移さないものでも、サービスが成長した際の、さらなるサービス改善や他のサービスのコンセプト立案などに役立つことがあります。

ステップ4:解決策の検証

優先順位の高い解決策やコンセプトが決まったら、再度ユーザーインタビューを実施します。その際、以下の事項を必ず確認してください。

  • そのサービスには人を惹きつける魅力があるのか
  • ユーザーはそのサービスや内容について理解しているのか
  • ユーザーのサービスに対する内容の理解は、サービス提供側の理解と一致しているか
  • そのサービスはユーザーのニーズや不便だと思うことの解決につながっているか
  • ユーザーはこのサービスに課金する(最重要事項)

このフィードバックを基に、サービス・コンセプトをさらに改良してフェーズ3に進みます。

フェーズ3:ビジネスシナリオのモデリング

サブスクリプション・サービスのコンセプトや、ステークホルダーのユーザーニーズに対する準備が整ったフェーズ3では、新しいビジネスモデルにさらに磨きをかけ、長期的な維持が可能なものにします。そのためには、これまでの調査と、サブスクリプションのローンチを成功させるために必要な、これまでに挙がっていたビジネス上の疑問を基に構築する必要があります。このフェーズでは、以下のことを行います。

  • サービスに対するユーザーの支払意思の検証
  • サービスの具体的な価格帯の調査
  • ユーザーのコンバージョン率の推測
  • 使用するペイウォールの確認

ステップ1:バンドルサービスの定義づけ

サービスに対するユーザーの支払意思の検証には、ユーザーに提示できるサービスのバンドル(組み合わせ)を定義することが重要です。製品のコンセプトやサービスに関する以前の調査をもとに、ベーシックやプレミアムプランの他、様々なサービスを組み合わせ、最も魅力的な組み合わせを探し出し、ユーザーの支払い意思を高めることに繋げます。

ステップ2:バンドルサービスの価格調査

ユーザーにとって最も魅力的なバンドルサービスについて、そのサービスに対する支払い意欲やユーザーが納得する価格帯など、更に調査を重ね、深掘りをします。この作業には、価格設定に実績のある人材を配置するか、外部の戦略構築の専門家を雇うのも一つの手です。

またこの調査は、有料会員数の最大化、総収益やARPU(1ユーザー毎の平均収益)の増加など、ビジネス目標に沿った価格設定を理解するのに役立ちます。

ステップ3:収益シナリオのモデリング

価格テストの結果をもとに、収益シナリオをモデル化します。Pianoは独自のモデリングツールを使用しており、メーター制ペイウォール、フリーミアム、ハードペイウォール、サービス価格、年間購読と月間購読の組み合わせ、オファー表示率、通知の種類、オファーのコンバージョン率、プロモーション施策、ペイウォールからの会員化、広告収入の損失見込み、定着率など、キーとなる要素が全て含まれています。

フェーズ4:Go-to-Market戦略の構築

このフェーズ4に至るまでに、ターゲット層、サービスの特徴、ビジネスゴールを達成するための価格設定を明確にすることができたはずです。

このフェーズでは、その知識をすべて行動に移し、サブスクリプション・サービスと、それをサポートするGo-to-market戦略を構築するために以下の事項を行います。

  • 価格設定プラン
  • ユーザーのターゲティングプラン
  • ユーザーへのメッセージングのアウトライン
  • カスタマージャーニーのデザイン

ステップ1:初期価格の設定

これまでに行った価格調査で、ユーザーの支払い意欲が明確になったかと思いますが、その調査では、ある程度の上限を意識した価格帯が提示されていることがほとんどでしょう。多くの場合、Pianoではサブスクリプションビジネス開始時に、価格のテストをすることを推奨しています。

複数の価格を比較することで、異なる価格帯の初期コンバージョン率を把握でき、ビジネスモデルを最適化するための現実的なデータが得られます。また、月額課金と年額課金のサブスクリプションプランを両方オファーし、各コンバージョン率を把握することも推奨します。

Pianoの顧客データによると、年額プランは、より多くの先行収入をもたらし、LTV(顧客生涯価値)が最大化する一方で、月額プランではコンバージョン率は大幅に向上するものの、解約率が高くなりため、LTVが低下する可能性があります。

ステップ2:初期のターゲットユーザーとペイウォールの設定

ビジネスのローンチ直後の段階で、どのくらいのユーザー数を獲得したいのかを決め、そのグループのコンバージョン率を算出します。その数値から、サブスクリプションへと進むユーザーを特定します。Pianoには、アルゴリズムを使用してこれらのユーザーを簡単に識別する、LTxと呼ばれるモデリング機能があります。

そのユーザーグループの行動を基に、彼らが最も良く反応するペイウォールモデルを選びます。メーター制もしくはソフトペイウォール、フリーミアム、メンバーシップ制、ハードペイウォール、ダイナミックペイウォールなど、どのペイウォールを採用するのかすべて検討してください。

ステップ3:メッセージングの作成

有料会員になることのメリットをどのように伝えるか?ユーザーに何が一番刺さるのか?前述のリサーチでわかった価値観や解決すべき課題、そしてサービス・コンセプトの検証におけるユーザーからのフィードバックをもとに、メッセージングを考えてみましょう。

自社サブスクリプションサービスを認知してもらえる幅広いメッセージと、特定のオファーなどに関して説明したものなど様々な異なるメッセージを作成し、テストを行ってください。どのメッセージのコンバージョン率や定着率が高いか?これらのメッセージはどのページ、どの枠で効率よく利活用できるかを考えます。

ステップ4:カスタマージャーニーのデザイン

最後に、ユーザーの新規サイト訪問時から、サブスクリプション契約までにどのようにステップアップしていくかを計画します。新規ユーザーから再訪問ユーザーへ、さらにエンゲージメントをあげてファン、コンバージョン検討中からコンバージョン完了、などといった各ステップではユーザーを特定の行動へ促すために、それぞれの施策と適切なメッセージングが必要です。

以下の事項について考えてみてください:

  • ユーザーグループが有料会員になることを検討し、課金にまで誘導できるトライアルとはどのようなものなのか
  • 特別な割引やフリーミアムアクセスを提供し、再訪ユーザーになるよう促すことはできているか

サイト内、アプリ内のカスタマージャーニーを完成させてから、外部マーケティング活動を展開するのがポイントです。

Pianoを活用してビジネスのローンチの準備をすすめる

顧客層、サービス、ビジネス機会をしっかり理解し、Go-to-Market戦略の構築が完了したら、次のステップはローンチ前にサブスクリプション・ビジネスを支える適切なテクノロジープラットフォームを選ばなくてはなりません。

その後は、ユーザーからの直接の収益を伸ばすために、テストと改善を繰り返し行いながら、それぞれの指標を理解し利用していく必要があります。初期に設定した戦略に磨きをかけ、マーケティングを最適化し、ユーザーのみならず、編集部や戦略チームなど、社内にとっても何が最適かを学ぶためには、絶え間ないテストと改善が必要なのです。

ユーザーに最適なサブスクリプション・モデルを開発するには、継続的な学習と、数多くのスキルが必要です。その中には、現在組織内では活用されていないスキルも存在することでしょう。最も重要でエキサイティングでもあるこの時期を慎重に進め、サブスクリプション・ビジネスのローンチを成功させるために、Pianoのストラテジックサービスのご活用をお勧めいたします。

ストラテジックサービスのチームは、お客様の組織と並行するために、デジタル・サブスクリプションとユーザー行動を深く理解した、製品戦略、マーケター、データアナリスト、コピーライター、デザイナーのエキスパートから構成されています。Pianoのベンチマークデータを活用し、ウェブサイトのエクスペリエンスやパフォーマンスを継続的に向上させ、収益を拡大するために必要な戦略構築をご支援いたします。

お問い合わせはcx-info-j@piano.ioまでご連絡ください。